頚椎症性神経根症

頚肩腕症候群

頚肩腕症候群とは

首から肩、さらに腕などの範囲で、異常感覚(しびれ)、痛み、筋肉の凝りといった症状が現れる症候群のことを言います。

原因としては、長時間同じ姿勢を保ち続けながらの仕事(パソコン作業 等)をする、工場内での作業、調理などが挙げられます。どのような作業をしているかによって症状の現れ方は異なるとされています。
ただ多くは、手指や手関節をはじめ、腕や肘、さらに肩などの部位より、だるさがずっと続く、しびれや痛みが出るなどします。
なお自覚症状は強いものの、他覚症状は出にくいとされています。

治療に関してですが、原因とされる姿勢や動作をできるだけ避けるようにすることが大切です。
例えば、長時間同じ姿勢をとらないといったようなことです。
痛みなどがある場合は、対症療法として鎮痛薬や筋弛緩薬による薬物療法をはじめ、リハビリテーション(理学療法)などが行われることもあります。

変形性頚椎症

変形性頚椎症とは

そもそも頸椎の骨、椎間板、靱帯は加齢と共に変性していくのですが、それに伴って起きる頸椎にみられる症状のことを頚椎症と言います。
主な症状は、頸部の痛みと可動域の制限とされていますが、変性によって脊髄が圧迫されると手足の痙性麻痺がみられ(頚椎症性脊髄症)、神経根が圧迫されると左右どちらか一方の腕に痛みがみられるようになります(頚椎症性神経根症)。

治療では、まず保存療法が行われます。具体的には、頸椎カラーを装着する装具療法、痛みを緩和させる治療法としては、NSAIDsや筋弛緩薬などを用いた薬物療法となります。なお脊髄や神経根への圧迫によって、日常生活に支障をきたしていると手術治療(頚椎症脊髄症では、前方除圧固定術もしくは後方除圧術、頚椎症神経根では、前方除圧固定術もしくは椎間孔拡大術)となります。

首下がり症候群

首下がり症候群とは

体がしっかり起きている状態にあっても、顔を持ち上げてまっすぐ前を向くのが困難な状態を首下がり症候群と言います。この場合、首は背筋と一体化してピンとすることはなく、体幹(胴体)から見ると頭部は前屈したままとなっています。ただ、仰向けに寝ることで首は再びピンとした状態に戻るようになります。
なお首下がりを長く放置してしまうと、そのまま固定されてしまうこともあります。

そもそもアゴが胸にくっつくような姿勢(首下がり)になってしまうのは、首と背中の間にある頭をしっかり支える筋肉(僧帽筋、頭板状筋、頸板状筋、頭半棘筋 など)の筋力が低下してしまうことで起きるとされ、原因としては患者様に高齢者が多いことから加齢が関係しているとも言われますが、完全に特定されているわけではありません。そのほかにも筋力低下の症状がみられる病気(パーキンソン病、ジストニア、ミオパチー、頚椎症 など)によって引き起こされることもあります。

主な症状ですが、発症間もない頃は、肩こりのような違和感が現れますが、症状が軽度なので多くの方は気にも留めないことが多いです。やがて日が経過するにつれ、頭部を重く感じるようになるので、前かがみの状態をキープするようになります。このような場合に頭を上げようとすると首や背中にも痛みを感じるので、常に首は前を向けない状態になるのですが、首やその周囲に関する症状だけでなく、歩きにくい、食事が喉を通りにくくなる、呼吸が苦しいといったことなどを感じる患者様もいます。

治療に関してですが、原因疾患が判明している場合、その疾患に対する治療が行われます。
原因が特定できない場合は、手術療法による固定術が検討されることもあります。

偽痛風(クラウンデンス症候群)

偽痛風とは

偽痛風は肩・肘・手首・股関節・膝・足・首などの関節でピロリン酸カルシウムという物質が結晶をつくり炎症を起こす病気です。膝関節で多く起こり、首に起こるとクラウンデンス症候群といわれています。
症状としては関節の痛みや腫れ、発熱などがあります。同時に複数の関節が腫れることは少ないですが、以前膝に偽痛風が起きていたが今回は首に起きた、というようなケースはしばしば起こります。
診断は症状や診察、画像検査(レントゲン検査・CT検査・MRI検査)、関節穿刺などで行います。
治療としては痛み止めの飲み薬により、数日から数週間ほどで痛みが改善することが多いです。ただし、再発するケースも多く見られます。

頚椎捻挫(むち打ち)

頚椎捻挫とは

頸椎捻挫は一般的に「むちうち」と呼ばれることが多く、交通事故でよく見受けられる疾患です。この場合、主に衝突の衝撃をきっかけに急激で強い外力が頸椎に加わります。その際に(頸椎が)鞭のようにしなることで、様々な症状がみられるようになります。
主な症状は、首の痛み、頭痛、肩こり、めまい、手のしびれなどです。なお骨折や脱臼がみられることはありません。

治療に関してですが、主に保存療法となります。この場合、カラーで首を固定する装具療法で安静にします。痛みの症状が強ければ、NSAIDsなどの薬物療法も使用いたします。ちなみにカラー等による首の安静は長くても4週間程度に留め、その後は頸椎を動かしていくリハビリテーション(ストレッチ 等)を行っていきます。

環軸椎回旋位固定

環軸椎回旋位固定とは

環軸椎回旋位固定は斜頸(左右どちらかに首が傾いている、首が傾いたまま動かせない)という疾患の一種で、首の傾き以外にも無理に動かすことで痛みが出るようになります。なお頚椎の中で第1頸椎を環椎、第2頸椎は軸椎と言い、これらの関節が亜脱臼などを起こして首が動かない状態となっているのが同疾患です。

小児期や学童期(大体10歳くらいまで)によく見受けられます。その理由としては、これらの時期は環軸関節面が浅く未発達であること、また周囲の靱帯には緩みがあるといったことからで、例えばふとした外傷や喉の炎症などによって発症していくこともあります。
原因については、多くのケースで特定されておらず、その中の1割程度がのどの感染症と言われています。
お子様の首が曲がったまま元にもどらない、首が動かせない、腕の感覚が鈍くなっている、無理に動かそうとすると痛みが出るなどの症状があれば一度ご受診ください。

治療に関してですが、環軸椎回旋位固定の多くは、数日~10日ほどで自然に治癒するようになります。治療が必要な場合は、装具固定(頸椎カラーを用いる)をするほか、喉の炎症が原因であれば、抗生物質による薬物療法となります。症状が1週間以上過ぎても改善されなければ、理学療法の中の物理療法でもある牽引療法(体のある部分に引く力を加えることで症状を改善する)が行われます。また関節変形を確認し、整復が困難あるいは神経症状が伴っているという場合は、手術療法が検討されます。