胸椎圧迫骨折・腰椎圧迫骨折
胸椎圧迫骨折・腰椎圧迫骨折とは
脊椎(背骨)の背中の部分にあたる椎骨を胸椎といい、腰の部分にあたる椎骨のことを腰椎と言います。圧迫骨折とは、外から強力な圧力が背骨(胸椎や腰椎)に加わることで、骨がつぶれたように折れてしまっている状態を言います。
原因としては、骨粗鬆症が最も多く、転落して腰を強打したり、スポーツ外傷によって引き起こされたりすることもあります。そのほか、がんの骨転移によるケースもあります。
主な症状は、体を動かす度にみられる強い背中や腰の痛み、変形、あるいはつぶれた椎体が神経を圧迫すれば足にしびれや痛みがみられるようになります。また骨折の箇所が複数になれば、背中は丸くなって身長は低くなっていきます。
治療ですが、軽症であれば保存療法となります。具体的には、コルセットやギプスなどで患部を固定し、安静に過ごすようにします。痛みの症状があれば対症療法として、NSAIDs等の内服薬、炎症を抑えるための湿布を使用することもあります。
なお保存療法だけでは痛みが治まらない、脊椎が変形しているとなれば手術療法(椎体形成術、椎体固定術)が選択されます。
変形性腰椎症
変形性腰椎症とは
腰椎(腰の骨)と腰椎の間にある椎間板(骨と骨の間にある円形の軟骨組織)や靭帯が変化し、腰椎が変形して腰痛が起こる疾患です。この腰痛は動作時に強く、動き出すと軽くなる傾向があります。
老化(加齢)が主な原因で、重労働や激しいスポーツを繰り返していると悪化しやすいと言われます。変形が進むと、脊柱管までが変形したり、腰が曲がったような姿勢になったりすることもあります。
治療に関してですが、根本的な治療が必要となれば、手術療法が検討されます。
対症療法としては、痛み止めや筋弛緩薬による薬物療法、神経ブロック注射、コルセットを用いた装具療法、運動器リハビリテーションによる理学療法(温熱療法 等)などがあります。
急性腰痛症・筋膜性疼痛症候群
急性腰痛症とは
急性腰痛症とは発症後4~8週間の期間で治まる腰痛のことで、一般的にはぎっくり腰と言われるものです。
この場合、突然強い腰痛に見舞われるのですが、急に重いものを持ち上げる、無理な姿勢で身体を捻るなどすることで起きるようになります。
発症の原因は、現時点では不明とされ、ぎっくり腰は非特異的腰痛に含まれます。
ただ、ぎっくり腰を発症するケースは、中腰の姿勢で何らかの動作(地面に落とした物を拾う、立ち上がろうとした 等)をすることで起きることが多いといわれています。
よくみられる症状は、急激に起きるとされる強い腰痛です。安静にしていると痛みは軽減しますが、動こうとすれば痛みは増すようになります。
痛みについては、多くは2週間程度で治まっていきます。
ただ2週間以上経過しても痛みが続く、足にしびれを感じる、ぎっくり腰を繰り返すという場合は、別の疾患の可能性もあるので、速やかに医療機関を受診されるようにしてください。
治療に関してですが、痛みが強い場合は、安静に過ごします。ただ必要以上の安静は逆効果ともいわれているので、痛みが出ない程度まで適度に動かすことも大切です。
また痛みや炎症を抑えたいという場合は、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の外用薬や神経ブロック注射のほか、アセトアミノフェンなどを用いることがあります。
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症とは
脊柱管の中は神経が通っているのですが、その中には脊髄神経、馬尾神経が通っています。
この脊柱管というのは、腰部において狭窄しやすく、それによって神経が圧迫されると様々な症状がみられるようになります。
このような状態を腰部脊柱管狭窄症といいます。
原因については、加齢や何らかの病気による椎骨(脊椎)の変性とされています。
加齢による変性としては、変性脊椎すべり症、変形性脊椎症等があります。このようなことから60歳以上の男性が発症しやすいといわれています。
上記以外にも、激しい運動によって引き起こされる脊椎分離症、外傷によるもの、先天的な要因、骨代謝疾患なども挙げられます。
なお脊柱管が狭窄したことによる主な症状に関してですが、神経根が圧迫を受けた場合は、多くはどちらか片側の臀部から足にかけて痛みやしびれというものがみられます(神経根症状)。
痛みは安静時だけでなく、立つ、歩く、体を後ろにそらすなどしても現れるようになります。
また馬尾神経が圧迫された場合は、痛みよりも異常な感覚(しびれ、脱力感 等)というのが、会陰部や臀部から足にかけて現れるようになります。
さらに残尿や尿意切迫感等を訴える膀胱直腸障害、性機能不全なども見受けられることがあります(馬尾症状)。
診断をつけるための検査として、脊柱管狭窄の状態を調べる画像検査(MRI 等)を行うことがあります。
治療に関してですが、神経根症状のみであれば、保存療法が中心となります。
内容としては、固定療法で腰痛コルセットを使用し、脊柱管が広がりやすくしていきます。
また痛みを抑制する治療として薬物療法も用いますが、主にNSAIDs、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン、ミロガバリン 等)、PGE1製剤、筋弛緩薬などを使用します。
なお神経根症状の患者様で保存療法では症状の改善が難しい、馬尾症状があるという患者様については、手術療法(椎弓切除術、椎体間固定術 等)が検討されます。
腰椎すべり症
腰椎すべり症とは
腰椎部分の椎骨が、尾骨側の椎骨と比べて、前方もしくは後方にずれている状態が腰椎すべり症です。この場合、腰椎分離症の進行によって発症すること(腰椎分離すべり症)もあれば、椎間板や脊椎が加齢等によって変性して発症すること(腰椎変性すべり症)もあります。
主な症状は、腰痛のほか、神経根が圧迫を受けると(片側の)臀部から足にかけて痛みやしびれがみられるようになります。このほか、歩き続けると足が痛くなって歩けなくなり、しばらく休むと歩けるようになる間欠跛行の症状が現れることもあります。
治療に関してですが、多くは、安静に過ごす、痛みがあれば鎮痛薬の使用、コルセットの装着による装具療法などによる保存的治療で改善されるようになりますが、重症化している場合は手術療法が検討されます。
腰椎分離症
腰椎分離症とは
脊椎骨は椎体と椎弓がひとつになった形で存在していますが、その間にある関節突起間部に疲労骨折が起きることで、それぞれが分離してしまった状態を分離症と言います。これが腰椎の脊椎骨で起きれば腰椎分離症と診断されます。腰椎の中でも第5腰椎で発症することが多く、スポーツをよくする中高生の患者様が多いです。
なお、発症の原因の椎骨が疲労骨折によって、尾側の椎骨と比べて前方または後方へずれているとなれば分離すべり症と診断されます。
自覚症状がみられないことも少なくありません。
人によっては、長時間同じ姿勢を維持し続ける、運動をしている最中に腰痛が起きることもあります。
治療に関してですが、中高生の患者様では現在行っているスポーツを中止し、コルセットを半年ほどの期間装着していれば、骨は癒合することがあります。ただ発症してから時間が大分経過している、成人になって発症した場合は癒合が困難とされています。それでも腰痛が強く出なければ、痛みが出た時のみ、コルセットや薬物療法(NSAIDs 等)を使用していきます。
これらが全く効かずに日常生活にも支障をきたすとなれば、手術療法が選択されます。
思春期側弯症
思春期側弯症とは
左右に背骨が曲がっている状態を側弯症と言います。神経や筋肉に何らかの病気を発症していることで起きることもあれば、先天的な奇形によって引き起こされる先天性側弯症などもあります。ただ側弯症の8割程度は原因不明の特発性側弯症と言われています。
特発性側弯症でよくみられる症状は、先にも述べたように背骨の変形で、左右で肩甲骨の突出具合が異なる、肩や腰のラインが左右で平行でない等の症状がみられます。特発性の多くは、小児の頃の健康診断や学校健診で発見されるようになります。
発症年齢によって、乳幼児期側弯症(男児に多く、3歳未満で発症)、学童期側弯症(3~10歳頃に発症)、思春期側弯症(11歳以上に発症し、女子に多い)に分類されます。
診断をつける際は、視診のほかX線撮影で曲がりの程度を確認していきます。
治療をする場合ですが、曲がりが軽度であれば観察となります。Cobb 角(側弯の角度を計測し、算出した角度)が25~40度という場合は装具を用いた治療が行われます。また40度を超え50度に達するようになると手術療法が選択されます。