足関節捻挫
足関節捻挫とは
足首とも呼ばれる足関節ですが、同関節を安定させる働きなどをする靭帯が損傷を受けている状態を足関節捻挫といいます。
この場合、足関節に強い外力が加わった状態で、内側や下方に捻じるなどして発症することが多いです。これによって、靭帯や関節包、筋肉、腱といった部位が部分的に断裂されている状態を捻挫といい、靭帯が全て断裂している状態は靭帯損傷と診断されます。
なお足関節捻挫は、損傷の程度によって1~3度に分類されます。
1度は靭帯が軽度に伸びてしまっている状態をいいます。
また2度は部分的に靭帯が断裂しているケースのことで、3度は完全に断裂してしまっている状態をいいます。
よくみられる症状は、足首の痛みや腫れです。
足の痛みは、足を着くことで痛みが増します。また、くるぶしの周囲を指などで押す場合も痛みがでるようになります。
治療に関しては、保存療法と手術療法があります。いずれにしても捻挫を受傷してから間もなくという場合は、応急処置としてRICE療法(安静・冷却・圧迫・拳上)が行われます。その後は、軽度と重症で内容が異なります。
軽度な捻挫の場合は、装具やテーピングによって患部を固定し、痛みがある場合は薬物療法(NSAIDs)も用います。また受傷後、1~2週間後にはリハビリテーション(運動療法 等)も開始し、足関節を動かしていきます。
重症化している、関節に緩みがあるという場合は、ギプスによる固定、もしくは手術療法として、断裂した靭帯を縫合していく手術などが行われます。この場合も、安静後や手術後に同様のリハビリテーションが必要になります。
足関節骨折
足関節骨折とは
足関節は、脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)、これらの骨のいずれか、または複数が骨折する状態を指します。
主な骨折の種類
骨折部位 | 特徴 | 備考 |
---|---|---|
外果骨折 (腓骨下端) |
足首の外側の骨折 | 最も頻度が高い |
内果骨折 (脛骨下端) |
足首の内側の骨折 | 外果と同時に折れることも |
後果骨折 (脛骨後方) |
足首の後ろ側の骨折 | 転倒や強い捻りで発生 |
二果骨折 | 外果+内果の骨折 | 不安定性が高く手術が必要なことも |
三果骨折 | 外果+内果+後果の骨折 | 重度の骨折で関節内損傷を伴うことが多い |
治療は基本は手術療法です。
ごくまれに骨折のズレが極めて少ない場合や全身状態が悪く手術に耐えられない場合のみ保存療法(ギプス固定)となります。
距骨軟骨損傷
距骨軟骨損傷とは
足関節捻挫をきっかけに発症することが多く、同捻挫による痛みが長期間続いているという場合は、距骨軟骨損傷の可能性があります。同疾患は、何かしらのケガがなくても起きることがあるとされ、スポーツをした後に足関節に痛みや腫れがある場合も注意が必要です。
この距骨軟骨損傷は、足関節捻挫などで発生する強い外力をきっかけとして骨軟骨が損傷することもあれば、同じスポーツの繰り返しによる使いすぎ症候群によって発生することもあるといわれています。
主な症状ですが、病状の進行具合によって異なります。
軽度の場合は運動時にのみ痛みを感じるということがあります。
ただ重度になれば、歩くこともできなくなるほど痛いというケースもみられます。
治療にあたっては、まず画像検査(X線撮影、MRI)で病状の進行程度を確認します。
保存療法で改善が可能であれば、患部をギプスなどで固定し、安静に努めることで治癒するようになります。
重度と診断された場合は、手術療法が必要となります。
なおどちらの場合でも再発を予防するためのリハビリテーションは必要です。
内容としては、足関節周囲の筋力トレーニングなどを行っていきます。
踵骨骨折
踵骨骨折とは
踵骨は、かかとの骨であり、足の中で最も大きく、体重を支える重要な骨です。高所からの落下や強い衝撃によって骨折することが多く、足部の中でも重症度が高い骨折の一つです。
骨折のズレが少ない場合はギプス固定と松葉づえで体重をかけないようにする保存療法を行います。
骨折のズレが大きい場合は手術療法となります。
三角骨障害
三角骨障害とは
三角骨(さんかくこつ)は、距骨の後方に存在する余分な骨で、全人口の約5〜15%にみられる先天的な骨です。通常は無症状ですが、特定の動作や外傷によって痛みを引き起こすことがあります。三角骨が足関節の底屈時に周囲の骨や軟部組織と衝突し、炎症や痛みを生じる状態を指します。
特に
- バレエのポワント(つま先立ち)
- サッカーのキック動作
- ジャンプの着地などの動作
で誘発されます
主な症状は足首の後方の痛み(特に底屈時)、運動後の腫れや違和感、可動域制限(底屈が困難)、慢性的な違和感や疲労感があります。
治療方法は保存療法が基本となります。安静・運動制限、足関節の底屈を避ける、消炎鎮痛薬、テーピングや足底板の使用、リハビリテーションがあります。
どうしても症状が改善しない場合は手術療法を考慮します。
有痛性外脛骨
有痛性外脛骨とは
外脛骨(がいけいこつ)は、足の内側(舟状骨の内側)に存在する余分な骨で、全人口の約10〜20%にみられる先天的な骨です。
通常は無症状ですが、運動(特にランニングやジャンプ)や外傷、靴の圧迫(硬い靴・スパイクなど)などを契機に痛みを生じる状態を「有痛性外脛骨」と呼びます。
主な症状は足の内側(舟状骨周辺)の圧痛、運動時や靴を履いたときの痛み、腫れや発赤(炎症が強い場合)、偏平足傾向(足のアーチが低下)などです。
治療方法は、まずは安静やインソールなどで様子を見ますが、改善しない場合は手術で骨を取り除くこともあります。
第5中足骨基部骨折
(下駄骨折、ジョーンズ骨折)
第5中足骨基部骨折とは
第5中足骨は、足の小指につながる長い骨で、基部(根元)部分は腱や靭帯が付着しており、外力が集中しやすい部位です。捻挫と同じ足首をひねる動作で受傷しますが、骨折のタイプによって治療方針が大きく異なります。
骨折の場合はしっかりと固定して治す必要があります。骨の場所によっては治りにくいこともあるため、定期的な検査と場合によっては手術が必要になることもあります。
偏平足
偏平足とは
足裏というのは、すべてがべったり地面につくということはありません。
衝撃を吸収したり、体重を支えたりするため、アーチ構造となっているのですが、この部分のことを土踏まずといいます。この土踏まずが形成されないまま、足の裏全体がベタッと地面にくっついてしまっている状態が偏平足です。
小児期に起きる偏平足については、筋力が不足していたり、靭帯が十分に成長していなかったりということが原因であることが多く、このようなケースは成長するにしたがって、土踏まずが形成されるようになります。
一方、成人期でみられる偏平足には注意が必要です。これは、中年女性によくみられ、さらに肥満、あるいは立ちっぱなしで長時間いることが多いといった方に起きやすいといわれています。
原因としては、足アーチを維持するうえで欠かせないとされる後脛骨筋腱が加齢、荷重等によって変性や断裂が起き、これによって偏平足になっていくのではないかといったことなどがあります。
主な症状ですが、内側にあるくるぶしの下あたりに腫れがみられるほか、痛みが出ることもあります。
治療に関してですが、足アーチを支えるための足指の筋肉を鍛えるようにします。
そのためには、足指じゃんけんを行う、できるだけ裸足で生活するなど足指を使うようにします。
また足アーチの低下がみられるのであれば、アーチサポートの付いた足底板の使用や、硬くなっているアキレス腱のストレッチなども行います。
このほか、肥満の方は減量に努めることも大切です。
外反母趾・内反少趾
外反母趾とは
足の親指が「く」の字に曲がっている状態で、同指の付け根にあるMTP関節が外反変形することで発症します。
なお外反母趾は骨の変形ではなく、関節で骨同士の角度にズレによって引き起こされます。
女性の患者様が多く、幅が狭かったり、ヒールの高い靴を履いたりしていると発症しやすく、偏平足や病気(関節リウマチ、脳性麻痺 等)、外傷、遺伝的要因(足の親指が足の人差し指よりも長い 等)も発症リスクが高いといわれています。
主な症状ですが、くの字に曲がった出っ張り部分(MTP関節付近)が靴などで圧迫されると疼痛がみられるほか、同部位が擦れるなどすれば、発赤や腫脹のほか、潰瘍がみられることもあります。また小指側に曲がった足の親指の爪が人差し指に食い込んで傷つけることもあります。
なお病状が進行すると靴を履いていなくても痛みが出るようになります。
治療に関してですが、症状の程度が軽度であれば保存療法による治療となります。この場合、まず足のサイズにしっかり合う靴を選びます。さらに足底板を使用し、足にかかる負担もできるだけ軽減させていきます。
そのほか、足の指の筋力訓練として、足指じゃんけんなども行います。
痛風発作
痛風発作とは
高尿酸血症の合併症でよく知られているのが痛風です。同疾患の発症メカニズムに関してですが、尿酸は水に溶けにくいという特徴があります。そのため、血液中で尿酸が異常に増えると結晶化し、尿酸塩として存在するようになります。
これが関節で溜まり、その結晶が剝がれ落ちるようなことがあれば、それを白血球が異物と認識し、攻撃することがあります。すると関節に炎症や腫れが見受けられると共に激しい痛み(痛風発作)が伴うようになります。この状態にあることを一般的には痛風といいます。
痛風発作は、高尿酸血症の状態にある方が、プリン体が多く含まれる食品の過剰摂取、お酒の飲み過ぎ、水分不足、運動を激しくする等によって、急激に尿酸値の数値が変化することで発症しやすくなります。
痛風発作は発症から24時間あたりが痛みのピークで、これといった治療を行わずとも症状は徐々に和らいでいき、1週間後には何事もなかったかのように治まるようになります。
ただし、放置が続けば再発するリスクは高まります。
痛風は関節であれば、どの部位でも発症する可能性はありますが、大半は足の親指の付け根で起きるようになります。このほかにも、膝や足首などで痛みが出ることもあります。
この痛風は、高尿酸血症の患者様に必ず起きるというわけではありませんが、何の症状もないからと尿酸値の高い状態を放置し続ければ、痛風腎(腎機能の低下)、尿路結石、痛風結節等が見受けられるようになります。また動脈硬化を促進させてしまうので、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)などの発症リスクも上昇させます。
したがって、自覚症状がなくても尿酸値が高いと指摘を受けた場合は、速やかに医療機関をご受診ください。
治療について
高尿酸血症と診断された患者様は、生活習慣の見直しから始めます。
とくに食事療法が大切です。具体的には、プリン体を多く含む食品(レバー、魚の干物、魚卵 等)は避け、栄養バランスのとれた食事メニューにも努めます。またお酒を飲む方は節酒するほか、体外へ尿酸を排泄しやすくするために水分摂取も充分にしていきます(1日2ℓ以上)。また運動も尿酸値を下げる効果があるので取り入れます。ただ無酸素運動のやり過ぎは逆に尿酸値を上げてしまいます。中強度の強さによる有酸素運動(軽度なジョギングなら1日30分以上)が最適ですが、運動開始にあたっては一度医師に相談されるようにしてください。
さらに医師が必要と判断すれば、尿酸値を下げる効果のある薬を服用していく薬物療法も併用していきます。この場合、患者様の高尿酸血症のタイプをみて、尿酸生成抑制薬(アロプリノール、フェブキソスタット 等)や尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン、プロベネシド 等)が使用されます。
なお痛風発作が起きている状態では、上記の尿酸値を下げる効果のある薬を使用しません。症状が治まってから服用することになります。
痛風が起きている状態で用いられる薬物療法は、コルヒチン、NSAIDs、ステロイド薬などです。
腓骨神経麻痺
腓骨神経麻痺とは
腓骨神経麻痺(ひこつしんけいまひ)は、下肢の外側から足背にかけての感覚障害や、足首・足指の運動障害を引き起こす神経障害です。特に「下垂足(drop foot)」という症状が特徴的で、歩行に大きな支障をきたします。
他の症状として第1〜2趾間の感覚障害や下腿外側〜足背のしびれや感覚鈍麻があります。
原因
原因 | 内容 |
---|---|
圧迫性麻痺 | 長時間の正座、ギプス圧迫、車椅子使用など |
外傷 | 膝外傷、腓骨骨折、膝関節脱臼など |
手術後 | 人工膝関節置換術、膝外側の手術など |
その他 | 特発性、糖尿病性神経障害、腫瘍、絞扼性神経障害(エントラップメント) |
多くは特発性と言って明らかな原因がわからないことが多いです。特発性の場合は数か月で自然回復してくることが多いです。
重度であったり腫瘍が原因であったり自然回復してこない場合は手術になることもあります。
アキレス腱損傷
アキレス腱損傷とは
人体最大の腱と言われているのがアキレス腱です。この腱が損傷を受けた状態がアキレス腱断裂です。
スポーツ活動中に発生することが多く、踏み込む、ダッシュ、ジャンプなど、アキレス腱を急激に伸張する、足首に負担の掛かる動作をするといった際に起きやすく、20~50歳代の方によくみられると言われています。40代以降で発生する場合は、急にスポーツをした際に起こることが多いです。また断裂と一口に言いましても部分断裂と完全断裂がありますが、前者の場合は自覚症状が現れにくいので放置しやすく、その後に完全断裂となってから受傷に気づくということもよくあります。
発生時(完全断裂の場合)は、ボールが患部に当たったような衝撃を受けるほか、腱が断裂した音(「パチッ」という音)が聞こえることもあります。なお断裂した状態でも足首を動かす、歩行をするといったことが可能な場合もありますが、つま先立ちをすることはできません。また断裂部に陥没した凹みを感じ、そこに疼痛が現れるようになります。
治療につきましては、症状の程度によって保存療法か手術療法になります。
保存療法の場合はギプスによる固定、アキレス腱断裂用装具を用いた装具療法になります。
手術療法が必要という場合は、断裂したアキレス腱を縫合するアキレス腱縫合術が行われ、術後はギプス固定や装具療法となります。